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生徒会選挙 ⑪

  • 2019/05/24 22:40

 そして、一週間後。公開演説の日がやって来た。
「……早かったね、ここまで来るのも」
 体育館には既に大勢の人間が押し寄せていた。みんな、生徒会選挙には興味があるらしい。ってか、興味がなければここまで来ることはないだろうし、そもそも放送部がアナウンスしているしな。これで行かなかったらよっぽど興味がない人間なんだと思う。
 僕はというと、あずさと一緒に会場入りしていた。部長と池下さんは既に裏手に待機しているのだろう。応援してあげよう、とあずさが言っていたけれど、そんな余裕はなさそうだった。
「アリスは?」
「そういえば、居ないわね。……興味ないんじゃない? 未だこの学校に来たばかりだし」
 と言っても、僕と大差ないはずなんだけれどな。僕もここに来てやっと一ヶ月が経過したって感じだし。というかもう七月なんだよなあ。海開きにプール開きも行われた時期になってきて、暑さも群を抜いてやって来た感じがある。何というか、この暑さじゃやってられない状況だ。
 体育館にはクーラーがない。窓を開けているとは言え、風が通るのは疎らだ。はっきり言って、蒸し風呂状態と言っても過言ではないだろう。
「えーと、これから、公開演説会を開始致します!」
 そう言ったのは、新聞部の栄だった。そういえば公開演説会は新聞部の主催だったか。
「今回は二名の立候補者の演説が行われます。始めに、野並シンジさん、続いて金山瑛里沙さんが演説を行います。時間はそれぞれ五分間ずつ。簡単に自己紹介も行われますが、それも加味しての時間となりますので、ご注意くださいませ」
 つまり十分間少々のために我々生徒諸君は集まらされたというのか。
 何というか、効率が悪い。
 それを誰も否定しないのが間違いのような気がするけれど、まあ、それは言わないでおくことにしよう。
「それでは、先ずは、野並シンジさん! よろしくお願いします」
 そう言われて、壇上に立つ部長と池下さん。
 ……あれ? そういえば池下さんは何のためにいるんだろう? 五分間しか演説の時間は設けないって言っていたような気がするし、それ以外の時間は特に何も言っていなかったような気がする。となると、やっぱり池下さんが居る意味が分からないというか、何というか……。
「えーと、ここに居る人の殆どが『はじめまして』になるのかもしれません。でも、名前だけは知っているという方も居るかも知れませんので、一応ご挨拶させてください。初めまして、僕の名前は野並シンジと言います」
 一息。
「僕が会長になったらやることは一つです。……部活動の充実です。具体的に何をするのか、という話ですが、例えば学校に部費の増額を検討して貰えるようにするとか、部活動同士の交流をもっと増やすとか、そういう類いになると思います」
 そこで、部長は全員をぐるっと見渡した。
 さらに、話を続ける。
「この学校には、個性的な部活動が多く存在していることは、部活動に入部している皆さんが良く知っていることだと思います。しかしながら、その部活動内部では分かっていても、部活動外部の人間には分かって貰えないことが多々あると思います。僕だってそうです。僕が所属する部活動は、皆さんご存知かどうか分かりませんので、言っておきますと、宇宙研究部という部活動です。宇宙を研究するってどういうことだ? と思うかもしれませんが、はっきりと言います。僕達は、UFOの秘密を探っています」
 そこまで来て、くすくすと笑い出す生徒が増えてきた。
 そりゃそうだろう。この場で、UFOのことを口に出したら笑ってしまう人が出てしまうのも分かる。
 しかし、部長はさらに話を続ける。
 

生徒会選挙 ⑩

  • 2019/05/24 15:08

 そして、次の日。金曜日。
 久しぶりに部長と池下さんがやって来ていた。珍しいな、なんて思っていたのだけれど、部長は何処か疲弊している様子を見せていて、大丈夫かな、なんてことを思わせていたのだが――。
「来週、遂に公開演説の日がやって来る。という訳で、事前に準備しておかないといけなくてね」
「何かありましたっけ? 準備しておくことって」
「事前準備は念入りにしておくことが一番のポイントだよ。それくらい分かっておいた方が良いと思うがね?」
「それは失礼致しました」
 変に話を盛り上げていくよりかは、さっさと止めてしまった方が良い。そんなことを思いながら、僕は話を続ける。
「……じゃあ、アレですか? もしかして今から演説の予習をしておくとか」
「そうそう、そういうのをしようと思っていたんだよ。しておくと後で楽だし、何か突っ込まれるポイントを今のうちに潰しておけば何かと楽だからね」
「そういうものですか」
「そういうものだよ」
 なら、別に否定することもない。
 僕達は話を聞くだけ。部長の演説を完璧に聞いて、もし悪いポイントがあれば指摘する、という簡単なこと。それだけで良いなら全然悪いことじゃない。
 そう思いながら、僕は耳を傾ける。
 そうして、部長の演説が始まるのだった。

   ※

 演説は五分程度で終了した。何せ、それぐらいで済ませるのが普通なのだという。だとすればそれで問題ないと思うし、特に変なポイントも見つからなかった。だから僕は指摘することはなかったのだけれど――。
「何か、気になることがあれば何でも話をしてくれ。話をしてくれること、建設的な意見を述べてくれること、それだけで充分だからね」
「じゃあ、一つ」
 言ったのは、あずさだった。
「何かな、伏見さん」
「『部活動の充実』と言いましたけれど、具体的には何をするんですか? 部費の増加とか?」
「それが一番部活動にとっては良いことだと思うんだけれど、収入がないと何も出来ないのもまた事実だからね……。だから、具体的には部費の増加というよりも部活動間の交流を中心にしておこうと考えているよ」
「と、いうと?」
「部活動間の大会とか、そういうのが挙げられるかな」
「それで部活動が充実する、と?」
「僕はそう考えているよ」
「……成程、分かりました。ありがとうございます」
「他に意見はあるかな? 誰でも、何でも、構わないよ。……さっきの意見については、少し文章に取り入れておくことにしよう。何せ、突っ込まれるポイントは、出来る限り潰しておくか、敢えてそのポイントを残しておいて、そこに誘導するかのいずれかだからね。だったら、僕は、潰しておいた方が良い。完璧な演説を求めるのが、僕の価値観だからね」
 結局、意見はそれ以上生まれることはなかった。
 それから、特に何かある訳でもなく、僕達は解散することになった。
 一週間後の公開演説の日。
 その日がとても楽しみだと、僕は思うのだった。

生徒会選挙 ⑨

  • 2019/05/24 14:46

「いっくん、お待たせ! オレンジジュースと……キットカットは売ってなかったから、ブラックサンダーに勝手に変えておいたよ!」
「なんで勝手にブラックサンダーに変えてしまうんだ。そこは一度帰ってきて変更の有無を問うとかすれば良かったものを」
「えー。だって、別にどっちだって良いでしょう? 別に、ブラックサンダーでもキットカットでも」
「……それ、お互いのファンに喧嘩売っているけれど、それでも良いのか?」
「?」
 ああ、もう、あずさはこんなことどうでも良いと思っているのかもしれない。
 仕方ないので、二百円を支払って、オレンジジュースのペットボトルとブラックサンダーを受け取る。
「……ところで、最近部長がやって来ていないような気がするけれど?」
「ああ、それ? だったら、多分、演説の資料集めでもしているんじゃないかなあ」
「資料集め?」
 演説にそんなもの、必要だろうか。
「だって、演説と言えば、大変な資料集めでしょう? それに、私、聞いたもん。演説をするためには、相手を必ずや打ち負かさなくてはならない。そのためにも、大量の演説資料を手に入れておいて、大量の原稿を書き上げておいて、何パターンもの原稿を用意しておく必要がある、って」
「そんなことがあるのか……」
「だから、気にしない方が良いよ。選挙が終われば、またいつもの部活動に戻るって。UFOの探索もまた始まるだろうし……」
「ねえ」
 そこで。
 今までずっと沈黙を貫いていたアリスが声を上げた。
 僕はあまりの驚きで声を上げそうになったが、それをすんでのところで留めておいた。
 アリスは話を続ける。
「UFOの探索って、具体的には何をするの?」
「えーと、UFOの探索は、具体的には、遠くから見下ろすことかな」
 説明するんかい。
 しかも、この前やったことじゃないか。
「……遠くから見下ろす?」
「この辺りに自衛隊の基地があるのは、有名過ぎることだと思うけれど」
 あずさはホワイトボードの前に立つと、丸と線で何かを描き始めた。
 感じからして、江ノ島と、この近辺の地形だろうか。
 そして、江ノ島と思われる丸の傍に、四角形を描く。
「これが、自衛隊の基地、瑞浪基地だね。瑞浪基地には宇宙部隊が設立されているって噂もある。現に、自衛隊には宇宙部隊は存在している訳だしね。そうして、その宇宙部隊は、UFOと接触をしているんじゃないか、って噂もあるのよ」
「それで、UFOを目撃しよう、って話なの?」
「部長達の目論見はさらに上を行くようだけれどね」
「?」
「聞いて驚くんじゃないわよ。何でも……、UFOの正体を突き止めようとしているのよ、部長達、いいえ、この宇宙研究部は!」
「…………何ですって?」
 いや、驚くな、とは言ったが。
 まったく驚かないのは流石に想定外過ぎる。
 それも、やっぱりもしかして彼女がUFOと関係のある人物だからなのだろうか?
「……分かっていないようだから、噛み砕いて説明するけれど」
 それでもあずさの説明は続いていく。
 普通、そこで心が折れそうなものだけれど。
「UFOの意味を、先ず貴方は理解しているかしら?」
「……知っている。未確認飛行物体、略してUFO」
「そう。そのUFOの存在が、どれ程珍しいか貴方は分かっているかしら?」
「とどのつまり、宇宙人が乗り込んでいるかもしれない、ということ」
「そういうこと。UFOには宇宙人が乗り込んでいるかもしれない。ということは、UFOは宇宙人と切っても切れない関係性があるということでもある」
 歩きながら、あずさはさらに話を続ける。
 ここからどうやって話を盛り上げていくつもりなのだろうか? 僕には分からない。
「とどのつまり! この宇宙研究部がやるべきことは国家機密に触れることを意味しているのよ!!」
 ………………。
 あー、待てよ、おい。
 まさかの打ち切り的ダイナミック展開で幕を下ろしやがったぞ、こいつ。
 アリスはどんな表情を浮かべているんだ――僕はそう思ってアリスの方を見た。
 アリスは、無表情を貫いていた。
「……何というか、彼女にはうまく嵌まらなかったようね」
「うまく嵌まらなかったって何だ? 今の説明で嵌まるような考えがあったのか?」
「五月蠅いよね、時折。いっくんって」
「何だよ、その言葉!」
 わいわいがやがや、と。
 それから二人の会話になってしまい、アリスは置いてけぼりを食らってしまうのだが、それに気づくのは、それから一時間後のことであった。
 アリスが唐突に立ち上がったのだ。
 僕とあずさは急な出来事で目線をそちらに送ってしまったのだが、アリスが一言、こう呟いた。
「帰る」
 そう言って。
 鞄を持って、スマートフォンを仕舞って、アリスはさっさと部室を出て行ってしまった。
「……何か悪いことでも言ったかな?」
「知らない。それとも、放っておいたことが原因だったり?」
 それは有り得るかもしれない。
 いずれにせよ、彼女にはいつか謝らなくてはならない、なんてことを思いながら、僕は再び『銀河ヒッチハイク・ガイド』の読了目指して読み進めていくのだった。

 

生徒会選挙 ⑧

  • 2019/05/24 00:21

 難題をぶつけられてしまった。
 帰り道、一人でうんうん唸っていたのだが、思えば今日はあずさが居ないのだ。
 そう言われてみたら、いつも二人で帰っているのに、あずさの家を知ることはない。
 何せ、場所が遠いためか、少し離れた位置で、曲がり角に突き当たってしまうのだ。
 僕が右に曲がり、あずさが左に曲がる。ただ、それだけの違い。
 そこから先は僕も知らない道になる。だから、簡単に行ける訳がないのだ。
「というか、明日からどんな顔してあずさに会えば良いんだよ……」
 明日からも、いつも通りあずさは僕の後ろに座っている。
 そんな中で、あずさはUFOと何らかの関係性を持っているなどという話を聞いてしまえば、それを思わずにはいられないのは当然のことだろう。
 それに、あずさには宇宙研究部に入部させられた責任を問う必要もあったりする。
 いや、責任と言って良いのだろうか?
 責任問題、というと何か重要なことに感じてしまうかもしれないけれど。
「……とにかく、明日からも普通に過ごしていかないと……」
 僕はそんなことを思いながら、道をぶらぶらと歩いて行くのだった。

   ※

 次の日の朝。
 僕が席につくと、あずさは既に席に腰掛けていた。
 なんてことのない日常。平和な日常。
「おはよう、あずさ」
「おはよう、いっくん。……寝癖、出来ているよ」
「嘘っ? ほんとう?」
 寝癖を必死に直そうとするところで、あずさが手鏡を僕に差し出してくれた。
 僕は鞄を机の上に置き、椅子に腰掛けると、手鏡を使って寝癖を探し始めた。
「直った?」
「直った、直った。完璧だよ」
 僕は手鏡をあずさに返すと、鞄から教科書やノート類を取り出して、引き出しに仕舞っていく。
「いっくんは教科書とかノートを全部仕舞う派なんだね?」
「それ以外に何があるって言うんだ? まさかいちいち取り出す派とかあるのかよ?」
「え? ないの?」
「あるかもしれないけれど、面倒じゃないか? 僕は一回で取り出せるから引き出しに仕舞う方が良いと思うけれどな」
「そういうものかなあ」
「そういうものだよ」
 徳重先生が入ってきたので二人の会話はこれでお終い。
 会話中、ずっとアリスが僕達の方を見つめていたけれど、それはまあ、無視しておくことにした。話をしても良かったんだけれど、変にこじらせたくもなかったし。

   ※

 部室に行くと、誰も居なかった。鍵が職員室にあったから当然と言えば当然なのだけれど、アリスとあずさと僕、という三人で残されるには少々苦痛のようなものがあった。
 はっきり言って、話が盛り上がらない。
 二人とも、スマートフォンを(そもそも校則でスマートフォンの持ち込みは禁止だったような記憶があるのだけれど、何処から持ち出しているのだろう)弄くっている。僕はというと、『銀河ヒッチハイク・ガイド』等を読み耽っている。名著ではあるが、読むには少々億劫になる一作である。購入する程のものかと言えば、そこまでではない(父が読書家だが、SFについてはあまり興味を持っていない)ので、結局家ではなく、図書室で読むようになってしまう訳だ。
 スマートフォンを弄くっているあずさは、急にスマートフォンから視線を外す。
 そうしてスマートフォンを鞄に仕舞うと、部室から飛び出していった。トイレだろうか。
 しかし、こうなるとアリスと僕の二人っきり。ますます会話は弾む訳もなく、部室には沈黙が幅を利かせるようになる。
 僕はというと、『銀河ヒッチハイク・ガイド』を中盤まで読み進めたところで栞を挟んだ。今日はこのままこの本を借りてしまおうと思ったのだ。
 ちなみに、宇宙研究部はあまりにも暇な部活動なためか、図書委員と兼務になっている。要するに、僕達が借りたい本はいつでも借りることが出来るのである。カウンターから判子を取り出して、後ろにある読書カードにぽんと押す。それで借りることは出来た。今日は木曜日だから、来週の木曜まで借りることが出来る。ってかもう木曜日か。一週間が過ぎるのは早いなあ。何というか、この部活動に入ってから、一週間を早く感じるようになってしまった。それはやっぱり、この部活動があまりにも暇だからだろうか。図書室を利用する人も居ないから実質僕達の独占状態に陥っている訳だし。
「いっくん、何飲みたい?」
 不意に。
 声がしたのでそちらを振り向くと、図書室の入口からあずさが顔だけ出していた。
「購買に行ってくるのか?」
「うん。そろそろ試験も近いしね。勉強してから帰ろうかな、って思ったりして。だから、もしいっくんが欲しいものがあるなら買ってこようかな、と。あ、勿論お金は後で支払ってよね」
「オレンジジュースとキットカットを頼む」
「オレンジジュースとキットカットね。りょーかい!」
 びしっ、と右手で敬礼をしたあずさはそのまま立ち去っていった。
「あ、アリスの分は聞かなくて良いのか……」
 言おうとしたが、それよりも先にあずさは立ち去っていった。あまりの速度にウサイン・ボルトもびっくりだ。
 そういう訳で、僕とアリスはまたまた二人きりになってしまった訳であった。

 

生徒会選挙 ⑦

  • 2019/05/23 23:41

「……誰も居なくなったね」
 アリスとあずさ。二人が残された空間では、何も残されるはずがない。カメラもなければ、マイクもないのだ。とどのつまりが密室ということであり、それ以上でもそれ以下でもない。それが正しいかどうか間違っているかどうかと言われれば、正しいという選択肢を選ぶしか道がないのだろう。
 それはそれとして。
「貴方、いったい何者?」
 あずさは、単刀直入にアリスに問いかけた。
「へえ。分かっているんだ、自分が何者か」
 言ったのは、アリスだった。
「分かっているわよ。そのために、私はここに居るんだから」
「だったら」
 だったら。
「私が何者かも、当然説明がつくんじゃなくて?」
 アリスの言葉は、あずさの胸に届いたのだろうか。
 いずれにせよ、彼女はただ頷くことしか出来なかった。
 それは、二人きりの会話。
 それは、二人きりの談笑。
 それは、二人きりの談話。
 何にも残されることはない。何にも記録されることはない。何にも録音されることはない。ただの談話だ。ただの講話だ。ただの会話だ。
 結局のところ。
 それで済ませてしまっているのは、人間の良いところなのかもしれないが。

   ※

「……なぜ二人きりで残らせたんだ?」
 言ったのは、部長だった。
「え。だって、二人が残るって言った中、僕も残りますなんて言える訳ないじゃないですか」
「言えよ、そこは。何らかのチャンスを掴む良い機会だっただろうが」
「何らかの機会、って何ですか、それ」
「……ここだけの秘密にしておけよ、いっくん」
 部長はひそひそ声で、僕に語りかける。
「伏見は、一年生で、謎が多いんだ。何処に住んでいるかも分からない。お前も途中までは見送ったことがあっても、あいつの家には行ったことがないんじゃないか? そして、僕達も彼女の家に行ったことはない。というか、年下の女の子の家に行ける訳がない。そりゃ、分かりきった話だろう? そして、ここからが重要な話なのだが――」
「何ですか?」
「伏見あずさ、あいつが現れたのは、僕達が最初にUFOを見た一ヶ月前からだ。そして、高畑アリス、あいつがやって来たのは二度目のUFO目撃である日の次の日から。……これって、あまりにも偶然ができすぎてやしないか?」

   ※

 確かにそうだった。
 あずさの来たタイミングは今初めて聞いたが、アリスの来たタイミングはあまりにも都合が良すぎる。UFOがやって来たタイミングに合わせて転校生がやって来た。それってつまり、UFOに乗って来たということじゃないか、と思わせてしまうような口ぶり。
 いや、それが確かなのだろう。
「……二人の関係性を探れ、いっくん。これは一年生であるお前にしか出来ないことだと、僕は考える。それに僕は生徒会選挙で忙しいしな」
「池下さんは?」
「俺もパス。ってか、多分こいつの推薦人になることだろうし」
「推薦人?」
「生徒会選挙では、一人推薦人を設ける必要があるんだ。要するに、『俺が推薦するから、みんな安心してこいつに票を投じてくれよな!』というスタンスだ」
「成程」
「とどのつまりが、これから俺達は忙しくなる、っていうこと。自由になるのはお前だけだ、いっくん。良いか? 二人の関係性を突き止めるんだ。そして、出来うることなら……」
「出来うることなら……?」
「二人と『UFO』の関係性も突き止めて欲しい。それが、我々の望みだ」

 

生徒会選挙 ⑥

  • 2019/05/23 22:00

「それより! 話を進めても宜しいですか、野並さん」
「良いけれど、先ずは座れば?」
 パイプ椅子の束から、椅子を一席取り出し、それを広げる部長。
「ありがとうございます、わざわざやっていただいて」
 それを見た栄くんは頭を下げて、そこに腰掛けた。
「別に問題ないよ。それに、こちらとしても一応来て貰おうかと思っていたところだったしね。……で、何を話せば良いのかな、僕は」
「あ! そうですね。えーと……『今回の選挙に当たって、注目するべきポイントは?』」
「それ、僕が決めるんじゃなくて新聞部が決めるポイントじゃないのか?」
「そうかもしれないですけれど……、まあ、良いじゃないですか」
「ええと。それなら、話すけれど、……実は今回は、お互いにお互いを副会長にするということを決めているんだ」
「ほうほう! そうなんですか!」
「そうだね。だから仮に僕が会長になったら、そのまま金山……さんは、副会長の座に君臨することになる」
「そうなんですね!」
 インタビューは未だ未だ続きそうだ。
「次なんですけれど、『今回の選挙のポイントは?』」
「それって、僕が言って良いことなのかい? ……えーと、そうだね。部活動の充実を図るかな。僕が会長になったら」
「成程成程! それは僕にとっても素晴らしいポイントですね!! 出来ることなら、野並さんが会長になって貰うのもアリなのかもしれないですけれど!」
「いやいや、そういうところじゃないだろ……。新聞部は公平であるべきじゃないのか?」
「そうですね。確かに。……ま、僕は公平であるべきだと思っていますけれど。それでも、両方の陣営に話を聞いている以上、ちゃんと公平を保っていると思いますよ? それが正しいかどうかはまた別として」
「……次の話はどうするんだ?」
「次は、……ええと、取り敢えず以上です! ありがとうございました! 僕はこれから、金山さん陣営側に向かうので、これでさよならバイバイまたいつか、ということで!!」
「いつか会う機会があるのか……?」
「いや、あるかどうかは分かりませんけれど!! それでは!!」
 騒がしい奴だな、と思いながら僕は彼が立ち去るのを見送るのだった。
 手を振っておいたけれど、彼は何も見ないまま、そのまま立ち去っていった。ってか、走って行ったけれど、先生に見つかったら先ず怒られそうな気がするんだよなあ。
「……さて、話は変わるが、一つポイントは達成した」
「もしかして……さっきの新聞部のインタビューが?」
「写真も撮影して貰っただろ? あれで、完璧だ。広報活動は後はあっちが勝手にやってくれる。後やるとするなら……、七月頭の公開演説の内容決めといったところかな」
「「公開演説?」」
 僕とあずさは、声を合わせてそう言った。
 それを聞いてお互い目を合わせてしまった訳だけれど。
「……ああ、そうか。二人は一年生だから、分からないんだよね」
 言ったのは、池下さんだった。池下さんはテーブルにカメラを置いて、説明を開始する。
「生徒会選挙には、決められた広報活動が存在する。一つは新聞部を利用したインタビュー形式の広報、もう一つは新聞部が作成するポスターによる掲示、そして最後が投票日一週間前に行われる公開演説。そこが一番のポイントで、そこが最後の紹介で、そこが一番を占める場所だと言われている。生徒会選挙の八割を占めるとも言われているね、その公開演説が」
「そんなに重要なんですか……、その演説というのが」
「そして、その演説についてちゃんと情報を整理して説明しないと、大変なことになるという訳」
「どういうことですか?」
「簡単だろ。適当に行き当たりばったりに演説をしている立候補者と、事前に整理して自分の言い分をきちんと説明してくれる立候補者、どっちに票を投じたい?」
「あ……」
 答えは言わずもがな。
 とどのつまりが、事前に整理しておくことが大事だと言うことだ。
「まあ、演説まであと一週間以上ある。時間はたっぷり……とは言えないが、残されているからそこについては問題ないだろう。とにかく、僕は今日は帰る。君達はどうする?」
「俺も帰るよ」
 池下さんはカメラを鞄に仕舞い込んで、立ち上がる。
 先輩二人が帰るなら、僕達も帰った方が良いだろう。そう思って、僕も立ち上がった。
「僕も帰るよ。あずさはどうする?」
「私は……少し残るかな。アリスは?」
「私も……少し残る」
「なら鍵は伏見に渡しておこう。それで良いな?」
 あずさはそれを聞いてゆっくりと頷いた。
 そうして、部室に二人を残したまま、僕達は部室を後にするのだった。

 

生徒会選挙 ⑤

  • 2019/05/23 21:24


「ちわっす!」
 そんな会議をするかしないか、みたいなタイミングで図書室副室にノックもせずに誰かが入ってきた。首にカメラをかけたカメラ小僧、みたいな風貌の男子生徒だった。見覚えがある気がして、僕はその名前を呼んだ。
「もしかして、栄くん?」
「おっ、いっくんじゃん! どうしてこんなところに? ああ、もしかして、君は宇宙研究部に入部したのかい? 結局、この部活動にしたってのは、どうやら伏見さんの影響が強そうだけれど!」
 ぺちゃくちゃと喋る男だった。
 栄一輝。
 それが彼の名前だった。新聞部のカメラ小僧、と言われれば彼のイメージが定着しているらしい。一年生なのに充分過ぎるポテンシャルを秘めている訳だけれど、それを言ったところで何も変わりゃしないので意味がないと言えばそれまでになるのだけれど。
「おい、お前。カメラを使うのか」
 言ったのは、池下さんだった。
 ああ、そういえば池下さんもカメラをよく使う人間だ。というか、何処かのタイミングでカメラは全部自分が管理しているとかどうとか言っていたような気がする。それゆえに、カメラを持つ人間とは相性が良いのかもしれない。
「ええ、僕はカメラ小僧ですからね! 昔から一眼レフを手にいろんな場所を撮影しに行っていましたよ! 最近だと、猿島とかでしょうか?」
「猿島か。あそこは良いところだ。……でも、時期が悪いだろう? もっと海水浴が出来る時期に行けば良かったものを」
「あそこは遠泳禁止エリアですよ。……それに、泳ぐために行く場所でもありませんから」
「それもそうだな」
「あ、あの、えーと……猿島? って何処にある島なの?」
「横須賀にある島のことだよ! 東京湾最大の自然島と言われていてね、要塞の跡地とかあるんだよ。もし機会があれば君も一度行ってみると良いよ。面白い場所だよ、猿島は」
「へ、へえ。そうなのか……。ところで、栄くん。どうして君はここにやってきたんだ?」
「そうだ!」
 栄くんは、僕から離れて、部長の前に立つ。
「噂を聞きました。何でも、次の生徒会選挙に立候補する、と」
「早い噂だね。さては、金山が情報を流出させたな?」
「へへっ、まあそうですね」
「まあ、そうですね、じゃねえよ。上腕二頭筋を破壊してやろうか」
「え?」
「いや、ちょっとしたゲームのネタだ」
「そうですか」
「軽いな!」
「ゲームには疎いもので。ポケモンぐらいなら知っていますけれど」
「へえ。世代は?」
「アローラですね」
「ということは、アローラの姿がなかったことを知らない世代ということになるのか……?」
「そういうことになりますけれど。野並さんはどの世代なんですか?」
「……カロスだ」
「一個前じゃないですか。一応僕は初代もプレイしていますよ。バーチャルコンソールですけれど」
「バーチャルコンソールだったら僕も遊んでいる。二台の3DSを活用して無事種類を揃えた」
「……別にピカブイとPokemon GOで揃えれば良かった話じゃないんですか……?」
「ところでお前は何の話をしに来たんだ。ポケモンの話をしに来た訳じゃあるまい?」
「そんな訳! だから言ったじゃないですか、生徒会選挙に立候補するらしいですね、と」
「ああ、言ったな。それがどうかしたか?」
「それについて、インタビューを取らせてください。六月号に載せるんで」
「六月号って明後日だよな……? 間に合うのか?」
「前日は徹夜で頑張るので!」
「うわあ……、相変わらずハードだな、新聞部は」
 

生徒会選挙 ④

  • 2019/05/23 18:17


 次の日。金山さんがやってきて開口一番こう言ったのだった。
「貴方が立候補してくれるなら充分に嬉しいニュースだわ! 対抗馬が居ない、つまらない選挙にならなくて済むから良かったのよ」
「……何だか、僕を踏み台にしているようだが?」
「いやいや! ……でも、あなたには勝てそうにないわね、はっきり言って。私なんかより抜群に知名度があるもの、貴方」
「現職で生徒会副会長を務めているお前よりもか? それはないだろ」
「それが案外そうなのよ。貴方、貴方が思っている以上に知名度抜群なの分かっていないでしょう? 目鼻立ちも整っているし、スポーツ万能だし、頭は良いし……。ほんと、こんな部活動を自分で作るなんて言い出さなきゃ、引く手あまたでしょうに」
「悪かったな、こんな部活動を作るなんて言い出して」
「あら? 別に良いのよ。でもこの部活動を作るのに尽力した人の気持ちも考えて欲しいものね」
「……それは分かっているよ」
「ともかく! 貴方が立候補してくれるということなら、私達はライバルということになるわね。もし貴方が落選しても、私は副会長のポストを貴方に譲るわ。だから、そのつもりで」
「それはこちらも同じ気持ちだよ、瑛里沙」
 そうして、二人は別れることになった。
 金山さんはそのまま部屋を出て行って。
 部長はホワイトボードに視線をやるばかりで。
「……あの、」
「うん? どうかしたかな、いっくん」
「ちょっと聞きたいんですけれど……。もしかして、金山さんと部長って、昔付き合っていたんですか?」
「ぶぼっ!? い、いったい何を言い出すかと思いきや……。な、なんでそんな結論に至ったのかな」
 飲みかけのペットボトルから口を外して咳き込む部長。
 その反応からしてみて、やっぱり何らかの関係にあったのは間違いなさそうだった。
「……あのね、一応言っておくけれど、付き合っていたからって、優しくするつもりはないんだ。これは勝負だからね。そしてそれはお互いに思っていることだろうさ」
「……そんなもんなんですか?」
「そんなもんなんだ! ……まあ、君には分からないかもしれないがね」
「確かにそうかもしれませんけれど! 何ですか、その発言。さっきの僕の発言に対する当てつけですか!」
「当てつけじゃなかったら、何だと言うんだ?」
「うわ、その発言どうかと思いますよ、部長!」
「……野並。そんなことを言っている暇があるということは、この選挙、勝つ見込みがあるということなんだろうな?」
 それを言ったのは池下さんだった。池下さんは今もなおカメラを磨き続けている。磨き続けてなくなってしまうんじゃないか、って思ってしまうレベルだった。
 そんなことを思いながら、僕は池下さんの行動を見つめていたが――池下さんが僕の視線に気づいたのか、こちらを向いてきた。
「何だ。面白いことをやっているつもりはないぞ?」
「いや、ずっとカメラを磨いているな、って思って……。大事にしているんですね、そのカメラ」
「当たり前だ。UFOを撮影するにはカメラが必要不可欠だからな。ということはカメラがなければ何も出来ないと言ってもいいだろう。そんな部活動にとって、カメラ管理の役目というのは必要不可欠だからな。……まあ、持っているカメラは全部俺のものだから、管理するのも仕方ない、と言えばそれまでになる訳だが」
「へえ、カメラは全部池下さんが所持しているものなんですか」
「……ああ。そうだ」
 それは知らなかった。というか聞かなかったら一生知らない事実になっていたことだろう。
 そんなことを思いながら、僕は再び視線を部長に移す。部長はホワイトボードに何かを描いていた。その文様は部長にしか分からないように描かれていて、それを読み解こうとしている僕とあずさにはすっかりさっぱり分からないようになっていた。
 作戦会議をするつもりはあるんだろうか、なんて思えてしまうけれど、やっぱり既にルートは構築されているのだろう。
 僕はそう思って、取り敢えずパイプ椅子に腰掛けることにした。

 

生徒会選挙 ③

  • 2019/05/23 17:39

 次の日。
 部長は一枚の紙切れを持って部室にやってきていた。既に部室には池下さんと僕が待機しており(待機、といっても何かする訳でもなかったんだが)、その光景を見て僕はいったい全体何があったのかと思っていたのだが――。
「昨日、一日考えてな。あいつの言うとおりにすることにするよ」
「ということは、受けるんですか。生徒会選挙立候補を……」
「受けるしか、この部活動を存続させる道はあるまい」
 確かにそうかもしれない。
 そうかもしれない、のだが――それは僕達の強制できることではない、と思っていた。
 いくら部活動を存続させることが出来ないからって、それを部長に求めるのは筋違いだ。
 だから最悪、部活動は終わってしまうかもしれないなあ、なんてことを考えていたばかりだった。
 え? 何だか終わってしまった方が楽しそうな表情を浮かべている、って?
 それは剣呑剣呑。
 剣呑、という使い方を間違えているような気がするけれど。
「でも、良いんですか? もし、会長になったら」
「そのときはあいつを副会長にして仕事をすべて押しつけてやる。『会長選挙に出ろ』とは言われたが、『会長の仕事をしろ』とは一言も言っていないからな」
「それは確かに言っていないような気がしますけれど……」
 でも、それってインチキって言うんじゃないか?
 僕はそんなことを思ったけれど、それ以上言うことは出来なかった。
「さて、問題はそれで片付いた。……後は広報活動をどうするか、だが」
「広報活動?」
「一応、会長選挙に立候補するのだ。手を抜いたら相手にフェアじゃないだろ? だからこちらもちゃんとした対策を練らなくてはならないということだよ。分かるか?」
「そりゃ、そうかもしれませんけれど……」
 言いたいことは分かった。
 でも、問題が山積みということは依然変わりないはずだ。
 どうやって会長選挙を攻略していくのか。それは、部長の頭の中に何らかのルートが構築されているのだろうか。
 僕はそんなことを考えながら、部長の顔をただ見つめることしか出来なかった。

   ※

「へえ、結局、部長は立候補することに決めたんだ」
 帰り道。あずさはそういえば部長の立候補話を聞いていないことを思い出したので、そんなことを話してみたら案外食いついてきた。
 あずさもそういう話には興味があるんだな――と思いながら僕はさらに話を続ける。
「で、結局、どういう風に選挙戦を攻略していくかは次回以降の会議に回すことになって」
「え。じゃあ、私達も何らかの選挙戦に参加しなくちゃいけないって訳?」
「そういうことになるだろうね」
「うわー、面倒臭い……。そういうものがないと思ったから、この部活動に入ったのに。何だか、残念だなあ……」
「残念、だって?」
「だってそうでしょう? 宇宙研究部なんて枠外も良いところ。そんな部活動にとってみれば、選挙なんて夢のまた夢、なんて思うのが当然の一言じゃない?」
 そもそも、部活動と選挙なんてどう結びつくんだろうか。
「例えば、部活動で選挙なんてやるとしたら部長選かしら? 人数が多い部活動はそれゆえに優秀な人間が多い。だから、部長についても選挙を行う形を取る、なんて話を聞いたことがあるけれど」
「そんなことがあるのか」
「あるんじゃない? 何処まで本当なのか分からないけれど」
「分からないけれど、って……。適当なことだな」
「だって、そういう部活動に入ったことがないもの。実際に入ってみれば分かりそうなものだけれどさ」
「そういうものなのか?」
「そういうものなんじゃない?」
 お互いに、お互いが、疑問符を浮かべる。
 結局はそれでお終いになってしまうのだった。

 

生徒会選挙 ②

  • 2019/05/23 00:01

「は、はあ!? お前突然何を言い出すかと思えば……職権濫用じゃねえか!!」
「職権濫用でも何でも良いんです! とにかく、貴方に生徒会長に立候補して貰わなくては困るんです!」
「困る、って……。まさか、対抗馬が居ないとか?」
 ぎくっ。
 何かそんな効果音が聞こえたような気がした。
「ま、まさかほんとうに対抗馬が居ないのか……?」
「う、うっさいわね!! 別に対抗馬が居ないから貴方にお願いしに来たとかそういう訳じゃないし!!」
「いや、はっきりと言ってしまっているのだが。あとここは図書室だからもう少し声のトーン下げた方が良いぞ、仮にもお前生徒会副会長だろ?」
「とにかく!!」
 びしっ、と部長に指さす金山さん。
「貴方が立候補しないなら、この部活動は即刻解散して貰います! 部活動として、学校外に認められた活動をしている訳でもないし。はっきり言ってこの部活動は無駄なんですから!!」
 そう言って。
 逃げ帰るように、金山さんは去って行くのだった。

   ※

「部長、どうしますか?」
「うーん、生徒会長に立候補するのは嫌だけれど、部活動を潰されるのも嫌だしなあ」
「立候補しても、選挙で負ければ良いんじゃないですか?」
 言った僕の言葉に、全員が溜息を吐く。
 僕、何か悪いこと言っちゃいました?
「分かっていないようだから言っておくけれど……、部長は二年生で一番の成績なのよ……」
「え?」
「だから、仮に立候補してしまったら学力の差で投票されてしまう可能性が充分に高いだろうな。仮に変な施策を公言したところで、それを無視してでも投票する人は居ると思う。人間って、それくらい単純なものだからな」
 そんな馬鹿な……。
 ってことは、選択肢は二つに一つしかないじゃないか。
「でも、いずれにせよ、この部活動を継続させるためには、部長が立候補するしか道はないんですよね?」
「そうなっちゃうんだよなあ……。うーん、そういうのが面倒だから敢えて生徒会から距離を置いてきたはずだったのに、どうしてこうなったのやら」
 帰宅時刻を報せるチャイムが鳴ったのは、ちょうどそのときだった。
「……取り敢えず、これは持ち帰りの課題にすることとしよう。君たちの歓迎会もいつかはやらないといけないから、予定を空けておいてくれよ。あ、いつやるかは未だ決まっていないから、明日にでも決めようか」
 そう言ってそそくさと準備を進める部長。池下さんはカメラを磨いていた。外に持ち歩いていたカメラが汚れてしまったのが、それ程気に入らなかったらしい。
 そういえば、結局昨日のUFOの写真を見られていないような気がする。
「あ、部長。昨日のUFOの写真は結局明日にしますか?」
「そうなるな。今日はこれ以上部活動を進めることは出来ないし……。だから明日確認することにしよう。最悪、あいつにはその成果を見せることも考えている訳だが……」
 そう言いながら、部屋を出て行く部長。
 それを見た僕達もまた大急ぎで準備をして、外を出て行くのだった。
 

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