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生徒会選挙 ⑪

  • 2019/05/24 22:40

 そして、一週間後。公開演説の日がやって来た。
「……早かったね、ここまで来るのも」
 体育館には既に大勢の人間が押し寄せていた。みんな、生徒会選挙には興味があるらしい。ってか、興味がなければここまで来ることはないだろうし、そもそも放送部がアナウンスしているしな。これで行かなかったらよっぽど興味がない人間なんだと思う。
 僕はというと、あずさと一緒に会場入りしていた。部長と池下さんは既に裏手に待機しているのだろう。応援してあげよう、とあずさが言っていたけれど、そんな余裕はなさそうだった。
「アリスは?」
「そういえば、居ないわね。……興味ないんじゃない? 未だこの学校に来たばかりだし」
 と言っても、僕と大差ないはずなんだけれどな。僕もここに来てやっと一ヶ月が経過したって感じだし。というかもう七月なんだよなあ。海開きにプール開きも行われた時期になってきて、暑さも群を抜いてやって来た感じがある。何というか、この暑さじゃやってられない状況だ。
 体育館にはクーラーがない。窓を開けているとは言え、風が通るのは疎らだ。はっきり言って、蒸し風呂状態と言っても過言ではないだろう。
「えーと、これから、公開演説会を開始致します!」
 そう言ったのは、新聞部の栄だった。そういえば公開演説会は新聞部の主催だったか。
「今回は二名の立候補者の演説が行われます。始めに、野並シンジさん、続いて金山瑛里沙さんが演説を行います。時間はそれぞれ五分間ずつ。簡単に自己紹介も行われますが、それも加味しての時間となりますので、ご注意くださいませ」
 つまり十分間少々のために我々生徒諸君は集まらされたというのか。
 何というか、効率が悪い。
 それを誰も否定しないのが間違いのような気がするけれど、まあ、それは言わないでおくことにしよう。
「それでは、先ずは、野並シンジさん! よろしくお願いします」
 そう言われて、壇上に立つ部長と池下さん。
 ……あれ? そういえば池下さんは何のためにいるんだろう? 五分間しか演説の時間は設けないって言っていたような気がするし、それ以外の時間は特に何も言っていなかったような気がする。となると、やっぱり池下さんが居る意味が分からないというか、何というか……。
「えーと、ここに居る人の殆どが『はじめまして』になるのかもしれません。でも、名前だけは知っているという方も居るかも知れませんので、一応ご挨拶させてください。初めまして、僕の名前は野並シンジと言います」
 一息。
「僕が会長になったらやることは一つです。……部活動の充実です。具体的に何をするのか、という話ですが、例えば学校に部費の増額を検討して貰えるようにするとか、部活動同士の交流をもっと増やすとか、そういう類いになると思います」
 そこで、部長は全員をぐるっと見渡した。
 さらに、話を続ける。
「この学校には、個性的な部活動が多く存在していることは、部活動に入部している皆さんが良く知っていることだと思います。しかしながら、その部活動内部では分かっていても、部活動外部の人間には分かって貰えないことが多々あると思います。僕だってそうです。僕が所属する部活動は、皆さんご存知かどうか分かりませんので、言っておきますと、宇宙研究部という部活動です。宇宙を研究するってどういうことだ? と思うかもしれませんが、はっきりと言います。僕達は、UFOの秘密を探っています」
 そこまで来て、くすくすと笑い出す生徒が増えてきた。
 そりゃそうだろう。この場で、UFOのことを口に出したら笑ってしまう人が出てしまうのも分かる。
 しかし、部長はさらに話を続ける。
 

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