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生徒会選挙 ⑤

  • 2019/05/23 21:24


「ちわっす!」
 そんな会議をするかしないか、みたいなタイミングで図書室副室にノックもせずに誰かが入ってきた。首にカメラをかけたカメラ小僧、みたいな風貌の男子生徒だった。見覚えがある気がして、僕はその名前を呼んだ。
「もしかして、栄くん?」
「おっ、いっくんじゃん! どうしてこんなところに? ああ、もしかして、君は宇宙研究部に入部したのかい? 結局、この部活動にしたってのは、どうやら伏見さんの影響が強そうだけれど!」
 ぺちゃくちゃと喋る男だった。
 栄一輝。
 それが彼の名前だった。新聞部のカメラ小僧、と言われれば彼のイメージが定着しているらしい。一年生なのに充分過ぎるポテンシャルを秘めている訳だけれど、それを言ったところで何も変わりゃしないので意味がないと言えばそれまでになるのだけれど。
「おい、お前。カメラを使うのか」
 言ったのは、池下さんだった。
 ああ、そういえば池下さんもカメラをよく使う人間だ。というか、何処かのタイミングでカメラは全部自分が管理しているとかどうとか言っていたような気がする。それゆえに、カメラを持つ人間とは相性が良いのかもしれない。
「ええ、僕はカメラ小僧ですからね! 昔から一眼レフを手にいろんな場所を撮影しに行っていましたよ! 最近だと、猿島とかでしょうか?」
「猿島か。あそこは良いところだ。……でも、時期が悪いだろう? もっと海水浴が出来る時期に行けば良かったものを」
「あそこは遠泳禁止エリアですよ。……それに、泳ぐために行く場所でもありませんから」
「それもそうだな」
「あ、あの、えーと……猿島? って何処にある島なの?」
「横須賀にある島のことだよ! 東京湾最大の自然島と言われていてね、要塞の跡地とかあるんだよ。もし機会があれば君も一度行ってみると良いよ。面白い場所だよ、猿島は」
「へ、へえ。そうなのか……。ところで、栄くん。どうして君はここにやってきたんだ?」
「そうだ!」
 栄くんは、僕から離れて、部長の前に立つ。
「噂を聞きました。何でも、次の生徒会選挙に立候補する、と」
「早い噂だね。さては、金山が情報を流出させたな?」
「へへっ、まあそうですね」
「まあ、そうですね、じゃねえよ。上腕二頭筋を破壊してやろうか」
「え?」
「いや、ちょっとしたゲームのネタだ」
「そうですか」
「軽いな!」
「ゲームには疎いもので。ポケモンぐらいなら知っていますけれど」
「へえ。世代は?」
「アローラですね」
「ということは、アローラの姿がなかったことを知らない世代ということになるのか……?」
「そういうことになりますけれど。野並さんはどの世代なんですか?」
「……カロスだ」
「一個前じゃないですか。一応僕は初代もプレイしていますよ。バーチャルコンソールですけれど」
「バーチャルコンソールだったら僕も遊んでいる。二台の3DSを活用して無事種類を揃えた」
「……別にピカブイとPokemon GOで揃えれば良かった話じゃないんですか……?」
「ところでお前は何の話をしに来たんだ。ポケモンの話をしに来た訳じゃあるまい?」
「そんな訳! だから言ったじゃないですか、生徒会選挙に立候補するらしいですね、と」
「ああ、言ったな。それがどうかしたか?」
「それについて、インタビューを取らせてください。六月号に載せるんで」
「六月号って明後日だよな……? 間に合うのか?」
「前日は徹夜で頑張るので!」
「うわあ……、相変わらずハードだな、新聞部は」
 

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