八月三十一日⑨
- 2019/05/29 03:20
家に帰って、時刻は九時半。
五時間分の夏休みの宿題が残されており、その宿題を片付けるのに必死になっていた。
しかし、やっぱり遊び疲れたのか眠気が半端ない。
普通ならそこで眠ってしまうものだろうけれど、そう簡単に眠気に誘導される僕でもない。
簡単に眠ってしまったら、それはそれで抗っていないことを意味している。
それは勉強に対する姿勢がなっていないということが意味しているのではないか?
分かっている。そう簡単に物事が解決しないことぐらい。
けれど、眠気には抗えないことだってことも分かっている。
だったら、どうすれば良いのか?
眠気の限界まで、勉強に励むしかない。
終わらせることが出来なかった、夏休みの宿題に取り組むしかない。
※
そして、幾度目かの八月三十一日を迎えた。
「今日も……八月三十一日か」
僕は深い溜息を吐いたまま、宿題を鞄に仕舞う。
どうせ片付かない宿題なのだ。学校でやってしまえば良いのではないか?
そんなことを考えて、僕はそれを持って行った。
「おはよう、いっちゃん」
階下に降りると、母さんがいつものように食事を作ってくれていた。
何度目になるだろうか、このメニューも。
そんなことを思いながら、食卓に着くと、パンを一囓りした。
※
登校もいつも通り。
だから、語るべきことではない。
強いて言うなら、あずさがやってこなかったことぐらいだろうか。
それぐらいの変化で、僕が八月三十一日を乗り越える何かを得ることが出来るだろうか。
答えは見えてこない。
けれど、それは、きっと一縷の望みになるに違いない――なんてことを僕は思ってしまうのだった。