八月三十一日⑩
- 2019/05/29 14:46
「今日は天体観測をするぞ!」
「部長、今日も、の間違いじゃないんですかー?」
部長の言葉に、金山さんが茶々を入れる。
「五月蠅いな。そりゃそうかもしれないけれどさ。けれど、そういうのを言うのは野暮ってものだぜ」
「野暮でも何でも間違っていることを間違ったままにするのは良くないと思いまーす」
「それはそうかもしれないが……!」
僕達の会話もいつも通り。
宿題をやっていても、それが終わるところを見せてはくれない。
いっそ誰かに手伝って貰えないと終わらないんじゃ……。
「…………思い出した」
「?」
「そうだ。そうだよ! 思い出したよ!」
「な、何だ。いっくん。急に大声を出して。暑さでとうとう頭がやられたか?」
「違います。……分かったんです。この窮地を脱する作戦が!」
窮地と言っても、窮地に立たされているのは僕だけなんだけれど。
エンドレスエイトに、やっぱり答えは残されていた。
エンドレスエイトは、どのように解決した?
答えはそこに見えていたじゃないか。どうして適当に海なんて行こうなどと思いついたのか。あのときの自分を恨みたいぐらいだ。
だから、僕は恥を忍んで、こう言い放った。
「僕の宿題を、手伝ってください!」
※
「しかしまあ、良くもここまで宿題を溜め込んだものだよね」
部長は深々と溜息を吐いたのち、そう言い放った。
何を言われても構わない。ともかく、僕の宿題さえ終われば無事九月一日に行けるはずなんだ。確定事項ではないけれど。
とにかく、永遠に過ごす八月三十一日だけは、、もう二度と送りたくない。
だから僕は恥を忍んで、宿題を手伝って欲しいと言ったんだ。
そうじゃなければ、何も始まらないから。
※
宿題は、三時間かけて終わった。
これで僕の夏休みは無事に終了した……。そう思うと、そのままぶっ倒れてしまいそうになりそうだったが、すんでのところでそれを堪えた。
「結局、いっくんの宿題を手伝っていたら疲れてしまったよ……。ちょっと休憩したら、いつも通り、屋上で天体観測と行こうじゃないか」
「あんたの場合は、天体観測というよりUFO観測だろうけれどね」
「良く分かっているじゃないか」
そうして。
僕達は夏休み最後の天体観測に勤しむ訳だ。
あわよくば、これが終わりになってくれれば良いのだけれど。