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殺人鬼、御園芽衣子 ③

  • 2019/05/27 18:13

 そして、帰り道。
 僕はいつも通り、家に向かって歩いていた。
 普段ならばあずさも居るはずだった訳だが、しかしながら今回は僕一人で帰ることになった訳である。ちなみに、理由というものはこれといってなく、ただ単純に彼女が早退してしまったためである。
 だから、僕は今日一人で帰っている次第である。
 それだけだった。
 それだけのことだった。
「……待ちなよ、そこの少年」
 夜にもなれば、明かりは配電柱の明かりと、家の明かりだけになっている。
 だから、誰が居るのかは分かっていても、どういう人物が居るのかは定かではなかった。
 そういう中での、出来事。
 声のトーンからして、女性だろうか。彼女は、僕の遠く、ずっと前に立っていた。
 ちょうど公園を抜けようとしていたところだったため、周囲十五メートルには何もなく、犬の鳴き声が聞こえる程度のことであった。
「ここを通り抜けようったって、そうはいかねえぜ」
「……いや、元からここを塞ぐ権利は誰にもないはずだけれど」
 塞ぐ権利は誰にもない。
 それはその通りだし、間違っちゃいない台詞だった。
 けれど、仰々しく言うつもりでもない。
 先に動いたのは相手だった。
 音がひずみ、世界が歪む。
 全く、寸分の狂いもなく、瞬発的に攻撃をしてくる。その動きには全く無駄がなかった。その動きには寸分の狂いもなかった。その動きには全くデタラメというものがなかった。
 いずれにせよ、僕が見た限りでは、それは常人にはコントロール出来ないような何かがある、と思わせてしまう程だった。
 にも関わらず、だ。
 僕はそれを、目の当たりにしても、なお。
 僕はそれを避けた。
 避けなければ、僕がやられていた。
 避けなければ、僕が死んでいた。
 刺している場所は紛れもなく、僕の心臓だった。
 避けきった僕を見た『彼女』は、ただただ溜息を一つ吐いていた。
「……お前、最低だな」
 と呟いた。
 

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