孤島の名探偵 ④
- 2019/05/25 19:09
説明から解放されたから、好きなことをして良いって?
そんなこと、誰が決めたんだい?
部長はそんなことを言い出しそうなオーラを放ちながら、僕達を食堂に集めるのだった。
「一応言っておくけれど、今回の合宿はただの遊びじゃないことは君たちも理解していることだろう」
「はあ? ただの遊びじゃないなら、何だというの。私、生徒会の仕事溜め込んでわざわざここまでやって来たんだけれど。だったら私帰るわよ」
「それは出来ません。三日後に貴方達を届けるという約束になっていますから」
「そういう訳だ。……だから、僕達がやることをここで発表しておこうと思う」
「何をするのよ?」
「答えは単純明快。……UFOを観測すること、だっ!!」
「……あんた、まだそんなこと考えていたの?」
「考えていたの? ではない! 実際に我々はUFOを目撃しているのだ、それも二度! そうだな、いっくん!」
そこで僕に振るか!?
僕は突っ込みを入れたくなったけれど、でもUFOを見たのは事実だし、うんと頷くことしか出来なかった。
「あっきれた……。あんた、ほんとう昔から変わっていないわよね。UFO関連の番組がやっていたら毎日釘付けになっていたレベルだったし」
「今でも釘付けになっているぞ? 放送回数が減って若干悲しいけれどな!」
いや、どや顔で言われても困るよ。
それに対して不満な表情を浮かべている金山さんも金山さんで困るよ。
というか、何をするのか結局はっきりと見えてこないのだけれど……。
「あ、あの、結局僕達は何をすれば良いんですか……?」
「それは良い質問だな! 僕達がやること、それは天体観測だっ!!」
「……見えない物を見ようとして?」
「望遠鏡を担ぎ込んだ……じゃなくてだな! 冗談抜きで、僕達が行うのは、天体観測だ」
「……ええっ。UFOはどうなるんですか?」
「焦るな、諸君。UFOもちゃんと観測出来るカメラを用意している。天体観測はいわば二の次。この三日月島は名前の通り、三日月が良く見える島として有名な無人島なのだよ。僕の親戚が買い取るまでは観光スポットとしても有名だったらしいがね」
それって、とどのつまり、金に物を言わせて観光スポットを買いあさったってことか?
それって何というか、残念な結果しか生み出さないような気がするけれど……。
「という訳で、だ。天体観測をしながら、ついでにUFOも目撃してしまおう! というのが今回の目的だ。二泊三日だから観測出来る機会は二回しかない。その二回でUFOをうまく観測出来るかどうか、それは君たちの運に関わってきているっ!!」
という訳で。
天体観測WithUFO観測。
その火蓋が切って落とされるのだった。
※
二階は、ベランダのようになっている。
どういう風になっているかというと、説明するのが大変なので、簡単に言ってしまうと、二階の窓側は全て引き戸になっており、そこから外に出ることが出来るようになっているのだ。
そこに三脚と望遠鏡を持ち込んで、天体観測に浸っている。
……と行きたいところだが、この日程では午後六時では未だ夕日が沈みきっていない。
だから星空を見るなんてことは難しいのだ。
だから先ずは、食事を取ることになった。
夕食に集められた面々は、既に配膳されている夕食を見る。
「本日は、給食のようで申し訳ございませんが、皆様の舌に合わせてメニューを選ばせて頂きました」
ハンバーグに付け合わせの野菜、ポテトサラダにバターライス、コーンスープといった感じだ。確かにファミレスに行けば八百円ぐらいで食べられそうなレシピのような気がするけれど、味はどうなのだろう?
ハンバーグを一口分切り分けて、口に入れる。
直ぐに肉汁がしみ出してきて、とても美味い。
さらにハンバーグにかかっているグレービーソースが食欲をそそっている。これはバターライスも進むって訳だ。
「バターライスはおかわりも出来ますから、事前に言ってくださいね」
それは助かる。
何せ中学生という食べ盛りの人間にとって、おかわりが出来る環境というのは大変有難いものなのだ。
そんなことを思いながら、僕はポテトサラダを食べ始めていく。