孤島の名探偵 ⑤
- 2019/05/25 22:40
食後にはアイスクリームとアイスコーヒーのサービス付きだった。
アイスクリームの甘い食感と、アイスコーヒーの苦味が妙にマッチしてなかなかに美味しい。
というか、ここって、普段使っていない別荘みたいな説明を受けたような気がするんだけれど……。
「ここって、別荘なんですよね。食料ってどうなっているんですか?」
「食料なら、貴方達と一緒に持ち込んだじゃないですか」
ああ、言われてみれば。大量の段ボールを運ぶように言われたような指示を受けた気がする。それが大量の食料だった、ということか。
「……いやはや美味かった。良かったら、メイドさんもこれから天体観測と洒落込まないかね?」
言ったのは、部長だった。
それって場合によってはデートの誘いになるんじゃないか、なんてことを思ったけれど、そんなことを思っているのは僕ぐらいのものだったようで、桜山さんは、
「すいません、明日の仕込みと今日の掃除があるものですから。失礼致します」
そんなことを言ってさっさと奥に引っ込んでしまった。
部長は本気でそれを捉えていたらしく、少し落ち込んでいる様子が見て取れるが、そんなことはどうだって良い。
「まあまあ、部長。僕達が居るじゃないですか」
僕は慰めのつもりで声をかける。
「いっくん……?」
「僕は天体観測、楽しみにしていますよ。UFOが見えるかもしれないですしね」
「いっくん、君はなんてやつだ……!」
思わず部長が抱きついてきそうになったが、それをすんでのところで避ける。
いや、そっちの口はないものですから。
「とにかく、天体観測に勤しむことにしましょうよ。元から、僕達はその為にここにやって来たんでしょう?」
それもそうだな、と部長は言った。
こうして僕達は、天体観測を始めるに至るのだった。
※
二階のベランダ。
改めて天体観測が出来る時間になってきた。
今日は晴天。雲一つない星空が広がっている。
「これならUFOを見つけても直ぐに写真を撮ることが出来るな!」
部長は腰に手を当ててそう言った。
さっきの落ち込んだ様子は何処へやら。至っていつもの部長に元通りといった感じだ。
望遠鏡と望遠カメラ。二台態勢で星空を観察する。
星空を観察するのは二の次で、第一目標はUFOを観測すること。
それが出来れば、僕達宇宙研究部としても鼻が高い。
だから僕達は空を眺めた。
「あれはオリオン座かしら?」
言ったのはあずさだった。
望遠鏡を眺めると、真ん中に三つの星が並んでいる星座――オリオン座が目の前に見えていた。
「そうだね、確かにあれはオリオン座だ」
「へえ。やっぱり」
「やっぱり、って何だよ。分かっていたのかよ、オリオン座って」
「そりゃ、それぐらい分かるわよ。理科の授業を受けていれば、それぐらいは」
「……理科の授業で星座って習ったっけ?」
「あれ? 習わない? 私の小学校では習ったけれど」
僕の小学校では習った記憶がない。
もしかしたら、先生独自のカリキュラムでも組んでいたのかもしれない。