孤島の名探偵 ③
- 2019/05/25 16:55
三日月島には小さな港があった。その港にクルーザーを到着させると、碇を下ろした。
「ここが三日月島か……。それにしても何もない島ですね」
三日月島の大半を別荘が占めており、小さい公園がある程度だ。
その三日月島で三日間共に過ごすとは言え、何をすれば良いのだろうか。僕達にはさっぱり分からない。
それにしても、池下さんが持つ大量の荷物はいったい何だというのだろうか。あまりの量に僕と桜山さんも持つのを手伝わされている訳なのだが、彼はこれが何であるか一切教えてくれやしなかった。教えてくれても良いだろうに、どうして教えてくれないのだろう。
「何もない島だから、僕達の宇宙研究部の活動に最適な場所だって訳さ。貸してくれた親戚には感謝してもし尽くせないよ」
そう言った部長は、扉を開ける。
中に入ると、広いホールに僕達を待ち受けていた。
ホールの右側に案内されると、そこには食堂がある。
「ここは食堂になります。毎日朝・昼・晩の食事はこちらで提供されます。時間になりましたらこちらにお集まりください。時間は、朝の場合は七時、昼の場合は十二時、晩の場合は十八時になります。よろしくお願い致します。それでは、それぞれの部屋についてご案内致します」
そうして、そこから離れ、階段を登っていく桜山さん。
僕達もそれを追いかけるように階段を登っていった。
それからは、それぞれの部屋を案内していった。
一番右奥が部長、次いで池下さん、金山さん、あずさ、アリス、そして僕。
順番としては、こんな感じだっただろうか。
部長 池下さん 金山さん あずさ アリス 僕 階段
だから、階段に誰かが向かうときは、足音で気づくということだ。流石に誰が降りていくかどうかまでは、実際に目の当たりにしないと分からない訳だけれど。
「では、後は娯楽施設について説明致します。各自荷物を置きましたら、一階にお越しください」
そう言って、桜山さんはすたすたと下に降りていった。
僕達はそれぞれの部屋に入って、荷物を置いた。
部屋の大きさはビジネスホテルのワンルーム程度の大きさ。トイレも風呂も部屋の中に完備されており、廊下を通ると、ベッドがあるというシステムだ。テレビは流石に用意されていなかったし、コンセントも必要最低限しか用意為れていなかった。これじゃスマートフォンは使わない方が良いだろう。そもそも電波が通らないって言うし。
荷物を置いて、僕は一階に向かった。すると、既に全員が揃っていた。何というか、早い仕事っぷりだと思う。
「遅いぞ、いっくん。部屋で一眠りしていたんじゃないだろうな」
「まさか、そんなことがあるとでも?」
「まあ、いっくんの不祥事は別に良いじゃないですか。取り敢えず、娯楽施設について終えて貰って、ほんとうに解散してしまいましょうよ」
「それもそうだな」
そういうことで。
再び桜山さんによる三日月島別荘の説明の再開だ。
食堂と逆の通路を歩くと、蔵書室に到着した。蔵書がたくさん用意為れており、埃も被っていない。常に掃除をしているのだろう。というか、誰が掃除しているのだろう、この部屋を?
「……蔵書室は自由に使って良いの?」
言ったのは、アリスだった。
「ええ。大丈夫ですよ!」
桜山さんは直ぐに頷いた。
考えたら、アリスは良く参加してくれたものだと思う。
だって、生徒会選挙すらボイコットした人間だぞ? そんな人間が、部活動の合宿に参加してくれるのか、と言われるとまた微妙なところだと思ったからだ。
ほんとうに全員が集まるのか――なんてことを考えていたら、桜山さんが僕達の前に立った。
「さて! これで説明は以上になります。何か質問はありますか?」
「特になし」
部長の言った言葉が総意になった。
そうして僕達は、説明から漸く解放される形になるのだった。