八月三十一日③
- 2019/05/28 21:03
予想通りというか、案の定というか。
結局、朝目を覚ますと八月三十一日になっていた。
これで八月三十一日は三度目の経験ということになる。
「何が原因だったんだ? ……ええと、思い出せ。エンドレスエイトでは何をしていた?」
思い出されるのは、『涼宮ハルヒ』シリーズの短編、エンドレスエイト。
ライトノベルも手広くカバーしている僕にとって、涼宮ハルヒシリーズも読了済みだった訳だけれど、しかし意外とその内容についてはぱっと浮かんでこないものである。
では、どうすれば良いか。
「じゃあ、違う行動を取ってみよう」
例えば、部活動のみんなを海に誘ってみるとか。
※
「海?」
「どうですか? 花火も買ったりして、夏休み最後に遊ぶっていうのは。勿論、夕方以降になれば、星空も見られると思うのですけれど」
「……良いんじゃない、良いんじゃないですか、部長! 確かに急ごしらえな意見であることは間違いないですけれど、こう暑い部室にずっと籠もりっぱなしよりかは海に泳ぎに行くのも悪くないと思いますよ。どうですか? 部長」
「うーん、悪いとは言わないけれどなあ」
部長はどうも乗り気ではなさそうだった。
「でも、たまには撮影場所を変えてみるのも悪くないんじゃないか? 野並」
意外にも池下さんはやる気がありそうだった。
これは僕の意見に乗ってくれそうな予感……。
乗ってくれるなら、乗ってくれるだけ有難い気分であることは間違いない。
「うーん、それじゃ、海に行くことにしようか。場所は……鵠沼海水浴場でどうかな?」
「鵠沼?」
「うんうん。江ノ島の傍にある海水浴場だけれどね、近くて人もたくさん多いけれど、この時間から行くとなるとその辺りしか想像がつかないよ。……そういう訳で、桜山先生、良いですね? 今日は海水浴で」
「うんうん、全然問題ないよ! 寧ろ私にとっても有難いと思っていたぐらいだし!」
どうやらメイド服は想像以上に熱いようだ。
そんなことを考えながら、僕達は海水浴場に向かうべく準備を進める。
夏休み最終日。遊んでいる場合か、と言われるとはっきり言って違うけれど。
たまには違う行動を取ってみるのも、まあ、悪くはないだろう。
※
海水浴場は各自向かうことになった。
集合時間は今から一時間後の十二時。ちなみに、七里ヶ浜駅であずさと合流することになっている。
「急に海水浴をする、って……。えーと、あ、はい、これ! 学校用のパンツだけれど、これを履いて行きなさい」
「履いていくの?」
「その方が都合が良いでしょう?」
それもそうかもしれないけれど。
僕はパンツを持ったまま、自室へ戻っていく。
半袖のシャツに、半袖のズボン。いかにも今から「泳ぎに行きます」といった感じのスタイルに身に纏って、僕は階下へと降りていく。
「お小遣い、持った?」
「持ったよ」
「携帯は?」
「持った」
「じゃあ、問題ないね。行ってらっしゃい。……今晩、食事はどうする?」
「うーん、どうしようかな。食べるときは、連絡するよ。連絡がなかったら、用意しておいて」
「分かった」
そう言って、僕は家を出て行った。