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八月三十一日②

  • 2019/05/28 19:19

 次の日。目を覚ますと、九月一日……になるはずだった。
 時計を見ると、八月三十一日。
 ははあん、どうやら時計が壊れてしまったのかな?
 そんなことを思いながら、階下に降りていくと――。
「あら、今日は早いわね。どうかしたの?」
「だって、今日は始業式の日だろ? だったら早く出かけないと」
「……? 寝ぼけているんじゃないの? 今日は八月三十一日、夏休み最後の日じゃなくて?」
「…………え?」
 何を巫山戯ているんだ?
 今、母さんは何て言った?
「今、八月三十一日って言った?」
「言ったよ? それがどうかした?」
「いやいや、母さんこそ寝ぼけているでしょ。今日は九月一日――」
『八月三十一日、モーニングニュースのお時間です。皆さん、おはようございます』
 テレビからそんな言葉が聞こえてきて、僕の顔は青ざめた。
「どういうことだってばよ――――――――――――――!」
 僕は思わずテレビに向かって叫んでしまっていた。
 目を覚ませば、九月一日だったはず。
 だのに、起きたら、また八月三十一日。
 これって何? エンドレスエイト的な何か?
 だとしたら、僕のクラスにハルヒが居るのか? いいや、そんな奇抜な人間は見受けられなかったはずだ。
 だとしたら、いったいどうして?
「……疲れているんじゃない? 今日は部活動、休んだら?」
「う、ううん。大丈夫だよ。今日も部活動行ってくるよ」
 そう言って、僕は食べ終わった皿を片付けた。

   ※

 天体観測を終えて、夏休みの収穫を再確認。
 結局、夏休みはUFOの画像を撮影することは出来なかった。
 UFOなんてそう滅多に撮れるものじゃないから、仕方無いのかもしれないけれど、とはいえ、そのUFOを見つけることが出来るというのもこの宇宙研究部のモチベーションに繋がる訳であって、出来ることなら一度ぐらいは見つけておきたかった訳でもある。
「今日は最終日だし、みんなでファミレスでも行こうか?」
 桜山先生がそんなことを言ってきたので、僕達はそれに従うことにした。
 既に時刻は午後九時。夕食は今日は食べてくると言ってきたので特に問題はないはずだ。そう思って僕はそれに頷いた。
「そういえば皆さん、夏休みの宿題は終わりました?」
「夏休みの宿題? そんなもの終わったよ」
「僕も終わったよ、当然だろ?」
「私も終わりましたよ」
「…………私も、終わった」
 全員が終わったとの報告。
 なんと終わっていないのは僕だけだった。
「そんな質問をするということは、いっくんは未だ終わっていないということ?」
「うん、未だ終わっていないんだ。帰ったら徹夜で終わらせないといけないね……」
「徹夜はあまりしない方が良いよー。成長が止まるらしいしね」
「そうなんですけれど……。でも夏休みの宿題が終わらない方が未だ大変なので」
「そうなのよねえ……。四十日もあるぐらいだから、大量に宿題を押しつけてやろう、という思いも分からなくもないけれど。何せ私は宿題を押しつけた側の人間だし?」
 ああ、そういえばそうだった。
 確かに桜山先生は数学の先生で、どちらかといえば宿題を押しつける側の人間だったことを思い知らされた。
 それはそれとして。
 結局、僕は特に進展もなく、夏休み最後の天体観測(後夜祭含め)を終えることが出来たのだった。

  ※

 帰ったら、再び強烈な眠気に襲われた。
 そういえば昨日はこれで眠ってしまって八月三十一日に引き戻されたんだった……!
 だったら、この眠気に逆行すればいいんじゃないか?
 答えは見えてこないけれど、やってみる価値はある。
 そう思って僕は机に向かって、宿題の続きをやり始める。
 ……駄目だ。計算問題は眠気に通用しない。寧ろ眠気を促進する作用があるように見受けられる。
 ……そして、気づけば僕はそのまま机に突っ伏して眠ってしまっていた。

 

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