孤島の名探偵 ⑬
- 2019/05/26 20:37
いやいや。
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!
どういうことだってばよ!
狂言? ということはこれまでのことは全て嘘だった?
そんなことが有り得てたまるか、有り得るはずがあるものか!
「……あー、どうやらかなり落ち込んでいるようだけれど、要するに、これは嘘だった、ということなんだ。とどのつまりが、今までのことは君の新入部員の祝いだと思ってくれれば良い」
「いやいや、そんなことを言われても……」
「言いたいことは分かっている。分かっているが、全て事実だ。受け入れろ」
「ってことは僕が言っていたことも全部聞こえていた、と?」
「マイクがついているものでね。残念ながら、全て聞かせて貰ったよ」
「それじゃ、僕の推理を笑いながら聞いていたんですか、貴方達は!」
「笑いながら、とは言わないが、笑う程のことではあったな。おー、上手く誘導されているな、なんてことを思っていたりしていたよ」
「馬鹿野郎!」
思わずそんなことを部長に投げかけていた。部長は二年生で僕は一年生。埋まるはずのない、一年の壁を悉くぶち破っていくその言葉。はっきり言って、僕にとって最低最悪の出来事であることには変わりないだろう。
というか、最悪の出来事だ。
普通、考えたところでそれがどうこうなるかって話になるのだけれど、冷静に考えてみて、僕の考えがまともになるのかと言われれば、ならないというのが自明の理だろう。
なるはずがない。
なれるはずがない。
「……おーい? まさか本気で怒っている訳じゃないよな? 確かに騙したのは悪かったけれど、少しは諦めを持ってくれよ。そうじゃないと、宇宙研究部で、いや、この学校でやっていけないぜ?」
ニヒルな笑みを浮かべた部長は最高にクールだった。
いや、クールというよりか。
悪魔のような笑みを浮かべているように見えた訳であって。
それがどう考えたって、やっぱり悪魔のようにしか見えないのだった。
それが、僕の勘違いであったとしても、それはきっと間違いではないのだろう。
※
エピローグ。
というよりただの後日談。
最終日であった今日は午後に神奈川に帰ることになっていた。
昼食を頂いて、僕達は頭を下げる。
「ありがとうございました、桜山さん」
僕の言葉に、何のことかな? と言う。
はて、そんなことを言ってくるとは思わなかった訳だけれど。
「桜山さんはいつか必ず会えるのですっ! 二度と会えないなんてことは有り得ませんよ」
何だかキャラクターが変わってしまっているような。
まさかあのキャラクターも『作っていた』ものだっていうのか。
もう何を信じたら良いのかさっぱり分からない。
桜山さんの言葉を聞いて、部長はゆっくりと頷いた。
「そうだぞ、いっくん。必ずいつか会える差。そう遠くないうちにね」
そう言って。
まるでまた会う機会が用意されているかのように。
その後、桜山さんと僕達は船に乗り込み、横須賀の漁港に向かって船を動かし始めるのだった。