観測活動の再開 ③
- 2019/06/01 08:45
「あはは。そいつは結構。何故だか知らないけれど、我がクスノキ祭には例年メイド喫茶をやるクラスが出てくるんだけれど……、そうか、今年は君達のクラスになったか。まあまあ、面白い話じゃないか。今年は楽しいお祭りになりそうだな、なあ、池下」
「今年は、って、まるで去年がつまらなかったような物言いだけれど、別段、そんなことはなかっただろう? それに、俺達は、ずっと部活動の方に尽力していた訳だし」
「え? 部活動の方も何か出すんですか?」
「寧ろ出さないと思ったのか?」
思ってました、はい。
「……まあ、良い。部活動の方も何か出すことは決まっているよ。例えば陸上部なら都区聖ジュース、テニス部なら焼きそばという感じでね……。我が宇宙研究部は何をするか、教えてあげようか?」
是非、教えて貰いたいです。
「我が宇宙研究部では、新聞を発行する! 無論、ただの新聞ではないぞ! 今までのUFOやその他諸々の知識を総決算したものになる! 我が宇宙研究部はそのために活動していると言っても過言ではない!」
「とか言って、参加は今年からだろう? 部長」
「どういうことですか?」
「この部活動が出来たのが、今年だって話さ。去年には影も形もなかった。俺とあいつが遊べる場所が欲しかった。ただそれだけの理屈なのさ……」
それってまるで、遊び場所が欲しかった子供みたいじゃないか。
そんなことを言いたかったけれど、すんでのところで言い留まった。
「……まあ、この部活動の総決算ってのは間違いないだろうな。来年は受験があるから、部活動に執心出来る訳でもないだろうし」
「え? じゃあ、この部活動も終わりってことですか?」
「何だい? 君達が引き継いでくれるとでもいうのか?」
「それは……」
言い切れなかった。
言い出せなかった。
だって、アリスが宇宙人かもしれないのに。
いつまでも一緒に居られるとは限らないのに。
言えなかった。
言えるはずがなかった。
「……まあ、そんな暗い気持ちにならなくても良いよ。未だ半年以上もあるんだ! 全然UFOは観測出来るだろうし。僕達もずっとUFOを観測し続けられれば良いんだけれどね……」
「良いんだけれど……、何ですか?」
「そこまで世間は甘くない、って話だよ」
「そういうことですか」
「そういうことだよ」
いや、つまりどういうことだよ。
分かりたくないのかもしれない。理解したくないのかもしれない。
いずれにせよ。
僕達の生活は、これ以上長くは続かないだろう、ということ。
それを直ぐに思い知らされることになるのだけれど――その頃は、僕は何も知らなかった。
知らずにいた。
知らない方が幸せだったのかもしれない。もしかしたら。