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ラブレター ⑤

  • 2019/05/30 16:44

 映画は面白かった。
 百二十分楽しめる内容だった。
 元々このゲームは好きなゲームだった。しかし年齢と共に離れていってしまい、気づけば最新事情を追うことはあろうともゲームをプレイするまでには至らなくなってしまった、と言ったところだろうか。しかしながら、この映画は面白かった。そもそもモンスターにオッサンが入り込む時点でゲテモノか何かかと思ってしまっていた僕が間違っていた。そもそもこの作品にゲームの原作があること自体を知らなかった。何でも数年前に今はもう古いと言われるような携帯型と据え置き型のハイブリッド型ハードと言えるようなゲームハードで出たっきり新作が出なくなってしまったシリーズだったらしいのだけれど、僕に取ってみればそんなことはどうだって良かった。そう言えるレベルの仕上がりだった。予算と技術力に糸目をかけないハリウッドならでは、なのかもしれない。それが、僕の思った感想だった。それが、僕の考えた感想だった。粗筋を述べるのはどうかと思うのでこれ以上言わないでおくことにしておくけれど、僕としては、あんまり気にしない方向で良ければさっさと話してしまいたいところだった。この感動を誰かと共有したい気分だった。この感動を、早く誰かと共有したかった。それが、僕の中ではあずさとアリスということになるのだろう。というか、端から見て女子二人と男子一人という光景は、どういう風に写っているのだろうか。ダブルデート? いやいや、それには相手が一人足りない。それなら単純に友人同士の交流? そう思ってくれるのが有難いところだ。それ以上でもそれ以下でもないのだけれど。僕に取ってみれば、僕は、こういう男女交際には向かない人種だと分かっていたから。
「……ねえねえ、とっても面白かったよね? あの映画! もう一度見たくなるぐらい最高だったと思わない? 思わない? 私は思ったわ! レディースデイに一人で見に行こうかなあ。でもそうすると叔母さんが駄目って言うかもしれないなあ。だとすれば、やっぱりまたいっくんについてきてもらうしかないよね?」
「出来れば今度は僕も金銭的余裕のあるときにしてくれ。たとえば、ファーストデイとか」
「駄目駄目! ファーストデイじゃ、映画が終わっちゃうでしょう? でもレディースデイだったら毎週水曜日だから……あ、駄目か」
 毎週水曜日、って。
 学校をサボって映画を見に行け、って言いたいのか、お前は。
 でもまあ、そう思うのも何だか仕方ないような気がする出来だったと思う。それがどうであれ、それをどうするであれ、僕は何も考えないけれど。僕は絶対にサボってまで見に行こうとは思わないがな。まあ、女性人気が強い作品だろうな、って感じはしていた。現に映画館は女性が多かった印象が強かった。それ以上に、女性が多かったという印象よりも、僕が事前知識として仕入れていた情報が、ただ単純に女性人気であるということを知っていただけだったのかもしれないのだけれど。それがどうであれ、僕は何も考えない。僕は何も思わない。ただの埒外な考えであることには変わりないのだから。
「でも、休んだって誰も文句は言わないよ」
「いや、言うだろ。例えば家族とか」
「あー……うち、ちょっと特殊な家庭事情なんだよね」
「どういうこと? ……あー、いや、悪かった。聞いた僕が馬鹿だった」
 聞いた僕が馬鹿だった。
 普通は首を突っ込むべき話題じゃないのに。
 

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