夢と現実の狭間で ⑥
- 2019/06/15 13:23
五日目。
とうとう記憶は僕と出会う前まで遡ってしまった。しかしながら、僕と居た記憶は残っているようで(何と都合の良いことか……)、僕のことを忘れ去ってしまっている、ということはないらしい。良かった、そこは一安心である。
「……ねえ、いっくん。私、怖いの。どうしてここに居るのか分からなくて……」
「大丈夫、大丈夫だよ、あずさ。僕はずっとここに居る」
それは嘘ではない。
それは感情的ではない。
論理的に、論じて、確実に、話をする。
それが僕にとっての一番のポイントであり、それが僕にとって最大のポイントだった。
僕にとって――なのか、彼女にとって――なのか。
それは分からない。
それは分かりようもない。
分かるはずもない。
分かり合えるはずがない。
「ねえ、いっくん」
あずさは言った。
僕はあずさの言葉に頷いて。
「どうしたの、あずさ」
そう、呟いた。
あずさは僕の表情をじっと見つめたまま何も言わずに俯くと――ただ一言そっと呟いた。
「ううん、何でもない」
それはどういう意味だったのか、僕には分からない。
分からないからこそ、分かり合えないからこそ、分かり合おうとしたのかもしれない。
だとしても。
僕がここで過ごしていく意味は、あるのだと思っている。
ない訳ではないのだ。
絶対に、そう、絶対に。
※
その日の夜、僕は夢を見た。その夢は長い川を下っていく夢だった。川の途中には、あずさやアリスが居る。あずさやアリスはその川を守るべく何かに乗り込もうとしている。……あれは、UFO? UFOに乗り込もうとしているのだ、あずさとアリスが。そんなこと、させるものか――僕はそう思って彼女達の居る場所に手を伸ばそうとする。しかし、川の流れは激し過ぎる。どうしても、手を伸ばしても、届きようがない。届きそうにない。届くはずがない。分かっている。分かっている。分かっているのだが――でも手を伸ばしたくなる。そうしたくなる。そうでありたくなる。そうなりたくなる。そうしようと思いたくなる。だが、手は掠め取られてしまう。何に? 分かりきっていることだ。それは、川の流れだった。川の流れは思ったより激し過ぎて、僕が手を伸ばしてもとても届きそうにないのだ。届かなくたって良い。僕はただ、その手を伸ばしたいだけなんだ――! そう思っても、意味がないのかもしれない。分かっている。分かっているんだ。でも、それが答えではないとしても、僕は生きていく意味がないのかもしれない。それが、意味があることだとしても? そうだ、そうであるべきなのだ。僕は、生きていかねばならない。この激流に、置いて行かれないようにしなければならないのだ。僕は、そういう人間だ。そして、みんなとともに生きていく。あずさとアリスの居る平穏な日常を守っていく。たとえ、それが、世界を滅ぼすことになろうったって。僕は変わらない。生きていく意味には、変わらない。僕はそう思って、手を伸ばそうとして――しかし、それを止めた。僕は何も出来ない。僕はその激流に飲み込まれることしか出来ない。僕はあずさとアリスを守り抜くことは出来ない――。
そして、目が覚めた。