クスノキ祭 ⑱
- 2019/06/09 19:10
準備はそんな時間がかからない、って?
そんなこと言った奴はぶん殴ってやりたいレベルだよ。
そう僕は思って、段ボールで組み立てたものを設置していく。何を設置していくのかと言えば、簡易的な壁だ。一応調理エリアと休憩エリアは分けなくてはならない、という生徒会の考えの下動いているので、実際問題、それが分かるようになっていればどうだって良い、という話なのだが――それを良く理解してくれないのが生徒会だ。重箱の隅をつつくような指摘をしてくるのだ。あいつら、同じ生徒とは思えない。
「……おい、いっくん。休んでいる暇はあるのかよ? さっさとやって部活動の分手伝うぞ……。あ、いっくんは関係ないっけ?」
栄、てめえ、何を言おうとした?
「悪い悪い。別に宇宙研究部が変な部活動だとは思っちゃいないよ。それに、宇宙研究部は新聞を配布するってだけだから特に準備することはないんだろうな、と思っちゃってさ。ただそれだけだよ」
「確かに準備することは少ないよ。けれど、その言い方はどうかと思うんだよ」
「ははは。悪かったね。……でも、準備を手伝ってくれないと全員が準備終了と出来ないよ。だから手伝うことはちゃんとやって貰わないと。後で配分金貰うときに嫌な気分になるし」
配分金とかあったっけ?
「あれ? いっくん、休んでいるときとかあったっけ? ないよね? だったら聞いているはずだけれど。今回、メイド喫茶で得た配分金はみんなで分配するって」
そういえばそんなことを聞いた気がする。
ってか、それ以前に幾らか支払ったような気がするけれど……。
「まあ、要するに事前に支払っているんだけれどね。だったらトントンにする程度じゃないかな。それぐらいでしか、多分出来ないと思うよ。所詮中学校の文化祭だ。あんまり期待するのも間違いなんだからさ」
そんなもんだろうか。
「そんなもんだよ。……だから理解したら、さっさと手伝ってくれよ。そして急いで他のクラスほくそ笑みに行こうぜ」
「最低な性格だな、お前」
あ、ついに口に出てしまった。
「ははは。そんなもんだよ。……ところで原稿は仕上がったかい?」
「仕上がってなかったら、僕はここには居ないよ。今頃必死になって原稿を書いていることだろうさ。……前日には終わらせたよ」
「そりゃ何より。こちらも印刷機を貸したかいがあったってもんだね」
それはさておき。
準備を進めなくてはならない。
僕達はそう思って、話すのを止めて、作業に集中し出すのだった。