八月三十一日⑪
- 2019/05/29 15:14
後日談。
というより、ただのエピローグ。
僕の宿題をみんなで手伝ってなんとかして貰う作戦は功を奏して、次の日の朝、無事に九月一日を迎えることが出来た。正直な話、もしこれでまた八月三十一日だったらどうしようかと思っていたぐらいだ。頭を抱えていたことだろう。何せ、僕以外の全員がループしていることに気づいていないのだから。
九月一日は残暑の雰囲気が未だ残る、暑い朝だった。
僕が歩いていると、後ろからあずさが肩を叩いてきた。
「おはよっ、いっくん」
「ああ、あずさか。おはよう」
「昨日は無事に宿題終わらせられて良かったねえ?」
「そうだね。みんなに手伝って貰わなかったらどうなっていたことか……」
まあ、その『どうなっていたことか』というのは知っていることなんだけれど。
「どうしたの、いっくん。ぼうっとしちゃってさ。もしかして熱中症!?」
「いや、そんなことはないから、落ち着いて」
朝から熱中症になってしまったら、暑さのピークである昼にはどうなってしまうんだろうか。
きっと動けなくなってしまうのだろうけれど。
そんなことより。
「夏休み、結局ずっと部活動に出突っ張りだったよね。何というか、休んだ感じがしないというか」
具体的には数日休みはあったのだけれど、そこでも何かいろいろと問題はあったりして。
それは言わずもがな。解決はしたけれど、それ以上は言わないでおこう。
「……九月からも、UFOの観測は続けるつもりなのかなあ」
「そうじゃないと、宇宙研究部の意義がなくなっちゃうでしょ。だったら、部長自らが『部活動を活動停止する』ぐらい言い出さないと」
そうだよな。
そうじゃないとだよな。
そうじゃないと、やっぱり宇宙研究部じゃないよな。
未だ胚って三ヶ月程度しか経過していないけれど、そんな感じがしてならない。
「さ、急がないと遅刻するよ!」
「え? もうそんな時間?」
「そんな時間じゃないけれど、ゆっくりしているとショートホームルームには間に合わなくなる時間かな、ってぐらいだよ」
「それなら急がないと!」
僕と彼女は走り出す。
九月からの新学期も、良い季節になれば良いなと思いながら、僕達は一歩前に進む。